英会話レッスンの担当の Dustin 先生による英語慣用句習得のための1日1英会話です。
To eat humble pie
To apologize.
謝罪する。
"When the thief was caught, he had no choice except to eat humble pie."
その泥棒は捕まえられ、謝る以外に選択の余地はなかった。
humble pie とは一体どういうパイなのでしょうか。humble とは謙虚な(自分自身を卑しむ)、或いは身分が低い、質素なといった意味ですので、初めてこの言葉に接する人は、誰もが戸惑うに違いありません。
意味としては「 屈辱 」 ということですが、特に謝罪や発言撤回により味わうそれを指します。
では、「 謙虚や質素 」 と 「 屈辱 」 に何の関係があるのだろう、といいますと、イギリスの食文化や言語学にまでさかのぼってしまいます。
まずは食べ物ですが、もともとは14世紀に獣の臓物、とくに鹿の臓物を numbles や noumbles などと称していたそうです。それが15世紀にはumbles とも言われるようになりました。このようなモツは、パイの具として調理されることが多く、17世紀の書物にはこの料理が登場するそうです。
numble という古語が umble に変わっていったのは、a numble pie の冠詞と名詞の句切れがずれたことで an umble pie になったためで、これを「異分析」といいます。
英語にはよくある変化形だそうですが、調べてみると日本語にも身近にたくさんころがっています。
とても面白いので言語学に興味のある方はmetanalysis(異分析)をネットで調べてみてください。
その後、さらにumble がhumbleに変わっていったのですが、食用臓物と謙虚さはもちろん何の関係もなく、humble の語源は「人に見られないように布で覆うべく下半身の部分 」 を指すラテン・古代フランス語から来ているそうです。このモツ肉入りのパイはあまり上流階級の食すものではなく、身分の低い人々が好む料理であったこと、つまり 「人に見られたら恥ずかしい 」 状況ということも偶然的に重なり、今日のような意味を持つイディオムとなっていったと考えられています。長い長い歴史です。
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