"Rebate"と海外送金
Rebate(リベート)と言えば、ワイロ、袖の下、裏金の様な言葉や、はては、時代劇に登場する悪代官さえ連想されて、日本人にとって、何とも言えない違和感を感じますが、海外取引では契約書にも登場する、れっきとした商行為です。
不正のにおいのする"kickback"や闇から闇への"under-the-table"とは全く異なる存在で、"commission"(口銭/手数料)とほぼ同義語で税法上も認められた行為です。ビジネス英語としてのRebateと Commissionの使い分けは、単に国々の習慣によるように感じます。
リベートとは一般的に、輸出業者(取引代金受領者)が、信用状や電信振込み現金引換え/cash on delivery等などの手段で代金受領(回収)後、支払者や契約締結に向けて仲を取り持った第3者(コンサルタントやブローカー)に払われる割戻金や報奨金ですが、ただし当然ながらその額が無分別に幾らでもO.K.というわけにはいきません。
それでは、その額をどう判断すればいいかと点になると、少々注意を要します。受け取る方にとっては、多いに越したことは無いでしょうが、支払者側(輸出業者)にすれば、即ちコスト(経費)アップ=利益の目減りです。中には多額の金額をrebate名目で海外送金し、実は自分の口座に入れると言う古典的不正蓄財を企てる良からぬケースも発生するので、厳しい基準が適用され、裏づけ書類が必要です。
海外送金は告発権を持つ国税庁の査察に於いても重要項目です。取引金額にもよりますが、正当な取引である限りMax.15%程度は容認しているようですが、いずれにしろ正確な詳しい申告が大前提です。
興味のあるエピソードとして、以下のケースが有ります。
1990年代に、ある日本の商社が東南アジアのある国と約80百万円の輸出契約を行い、後日代金決済方法である信用状を受領しました。ここまでは普通の話ですが、驚いたことに契訳書の金額と同じで有るべき信用状の金額が約120百万円になっていました。
通常、信用状の開設はこの契約書或いは輸出者(日本側)が発行する見積書(Pro forma Invoice, Estimate, Quotation, etc.)をベースとするので、まずはあり得ないことが発生したわけです。
受け取った方は頭を抱えました。なぜかというと、この差額は信用状開設者側への還流を目的とした先方の勝手な増額工作であって、信用状受領者は返金しなければならない点です。とてもじゃないが、日本では50%に達するrebateの海外送金が認められる筈もなく、又裏づけ書類など当初から存在していません。当然ながら、契約金額にはかなりのrebateが既に含まれている上のこのけたたましいmark-up (値上げ)ですから、この商社のその後の苦労はいかばかりだったでしょう。
余談ですが、現地でこの差額がどう処理されたかは、当然ながら全くの "None of our business."でした。